養育費とは、未成熟児が社会的自立をするまでに必要とされる費用のことです。この養育費は親が子供を育てる費用とみなされているため、受け取った養育費の所有権はあくまでも子供のものです(民法752条)。そのため子供の親権を父親が勝ち獲った場合であっても父親は母親に養育費を要求することが出来ます。
最新の全国母子世帯等調査によれば、離婚後現に養育費を受け取っていると答えた監護者は5人に1人しかいません。父子家庭に関しては20人に1人しか母親から養育費を受け取っておらず、この数字は欧米に比べて極端に低い数字であります。
その理由として私が考えることは、同様に先進国の中で極端に低い面会交流の疎遠さにあります。実際に家庭裁判所で父親の代理人として活動するとすぐにわかることですが、裁判所は月1回2時間以上父親を子供に会わせようとはしません。これを世の中がそうなっているという意味での「相場」と考えれば、それに従わなければならないのでしょうが、生まれつき物分かりが悪い私は調停員に噛みついてでもその相場に追従することはありません。そもそも、月1回2時間という相場は全く法的な根拠がないものです。裁判所がそれ以上責任を取れない、つまり苦情を言われるのが嫌であるか、調停員が勝手に信じている男は育児が無理だという虚妄、或いはお得意の事なかれ主義のいずれであることは間違いないので、あくまで弁護士としての品格を喪わない程度にギャンギャン吠えると次第に相場の枠が壊れて行きます。この話題は共同養育実現に向けて日夜の草の根運動を繰り広げている私のメインテーマなので折に触れて話していきたいと思いますが、本日の本題は養育費です。メインテーマと聞いて、薬師丸ひろ子の~メインテーマ~を口ずさみ始めた方も気を取り直して聞いて下さるようお願い致します。
離婚の全体の1割と言われる調停離婚で離婚をした場合、必ず養育費に関する条項を結ぶことになりますが、条項を結んでもその後3年以上その養育費の支払がなされている割合はせいぜい5人に1人いるかいないかということです。その理由は定かではないですが、いちいち名作映画カサブランカのように愛し合って別れるカップルは極々少なく、二十歳の薬師丸ひろ子のように傷つく感じが素敵という理由で別れる夫婦は恐らく全くと言っていいほどいないと思うので、当然嫌いな人とはお金の連絡をするのも嫌という即物的生理的な理由が介在することは間違いないでしょう。
ところで、皆さん養育費の時効って何年かご存知でしょうか。養育費支払い請求権は「年又はこれより短い時期によって定めた金銭を目的とする債権」として五年の消滅時効が定められています(民法169条)。これが短いか長いかは個々人の受け取り方ですが、例えば7年前に子一人につき月額3万、子二人が監護者に支払われる条項が結ばれたのにもかかわらずこれが払われていないという状況の場合、監護者は非監護親に少なくとも5年分の360万円を請求することが出来ることになります。しかもこの債権、通常の債権が四分の一のところ、何と二分の一も給料債権に差押えが掛けられます(民事執行法152条3項、151条1項3号)。さらにさらに、仮に破産しても債権が免責されず、地獄の果てまで追いかけてくるという執拗さも兼ね備えています(破産法253条1項3号ハ)。
私は離婚を経験したお客様には必ず養育費だけはキチンと支払いましょうと言わせて頂いておりますが、大抵皆さん「だって子供に会えないのにどうしてお金だけ払わなきゃならないの?」と仰られます。子供に会わせないことを裏で手助けする家庭裁判所が悪いとは口が裂けても言いませんが、そう仰られるのも無理はありません。ただ、冒頭で申した通り、養育費は親から子に支払うものです。たとえ会えないとしても、人の親として最低限出来ることはすべきです。親権は取れなかったけど自分は親としてお金だけは払っていた。その歴然とした事実が貴方を救ってくれる瞬間が必ずある。その逆は地獄だ、と信じてやまないのです。
他方で、養育費を請求していない監護親に対しては必ず請求するように言わせて頂いております。「実の親なのに養育費も送ってくれなかった。私は親から見捨てられたんだ。」という喪失感はその後の人生で簡単に昇華されうるものではありません。
皆さん、眠っている養育費はありませんか?請求することで救われることがあるなんて素敵だとは思わないでしょうか。そう思った方は私に連絡をして下さい。JR武蔵野線と埼京線のクロスポイント、武蔵浦和駅で貴方の到来をお持ちしております。