フィジークとはボディビルをソフトにした競技です。ゴリゴリのマッチョでもソフトマッチョでもない。兎に角、カッコよければいいじゃないですか?カッコイイ理想の身体を目指しましょうよ!という、判りやすく言うとカルバンクラインのモデルみたいな肉体を目指す人達の競技なのであります。
いきなり武山に入隊した時の話をしますが、営庭で戦闘訓練をしているとき遠くの方で海上自衛隊の基本教練が見えました。私だけではなく、班のみんなが格式と英国風の伝統美を兼ね備えた海上自衛隊員の威容に目を奪われ、気も漫ろになってしまったのです。そんな状況を敏感に感じ取り、当時武山で一番精強と謳われた班長が言いました。
「いやぁ、海上はカッコイイよな。それに比べてどうだ、お前らは?そうだよな、ダサいよ。でも、俺はそんなお前らがカッコイイと思うぞ。ださカッコイイがカッコイイんだと班長は思ってるぞ!」
この文脈に限って言えば陸自はボディビルで、海自はフィジークと置き換えることが出来る…かどうかは判りませんが、フィジークパーティに出てみて判ったことがあります。それは、フィジークはやはり端的にカッコイイということです。普通にカッコイイ、女性にモテそうな、ダンスをしないEXILEみたいな青年たちがする競技です。海自はカッコイイと認めざるを得なかったあの時と同じように、このパーティーで私はこのことを強烈に認めた訳であります。ジムにおいてもフィジークの人が女性と話しているととても自然で絵になりますが、ボディビルの人が女性に話しかけると自然と110番したくなる心情を抱いてしまいます。仕方ないな、というのが正直なところです。
ところで、今はフィットネスブームなのであまり聞かれませんが5,6年前までは「どうして、筋肉を鍛えるの?」とよく尋ねられました。殆どの場合はうまく答えられなかったように思います。法治国家の現代社会において身体を鍛えることはもはや無意味で、それこそ女性にモテるための、カッコよく生きるための、アクセサリーのような行為であるのかもしれません。
しかし、かつて自衛隊に身を置いたものとして、弁護士として、あるいは、一人の父親として、もしその時が来たら人柱になってでも人を守ろうという想いが私の根底には流れています。日々の生活の中で次第に薄らいでしまうその想いを自分自身に確認する行為が身体を鍛えることだと思っているのです。
パーティは各クラスのフィジーク・オブ・ザ・イアーのショーで締め括られ、盛況の内に幕を閉じました。写真は会場で一番マッチョだった人とのツーショットです(笑)