イクメンの誕生

イクメンという言葉が誕生したのは今から丁度5年前のこと、当時の労働大臣が少子化打開の一助として国会で発言し、男性の子育て参加を目的とした「イクメンプロジェクト」を始動させたのがきっかけと言われています。私の長男はもうすぐ8歳ですが、長男が産まれたときはまだイクメンという言葉はなかったことになります。イクメンという言葉がこの世になかったその頃、私は自衛隊を退職して脚を引きずりながら近所のスーパーでレジを打つしがない30過ぎの男でした。

いま5歳になる次男が産まれた頃にその言葉が世に出回り始めたことになりますが、イクメンというのは働きながら子育てをするパパと言うイメージが根底にあるため、私のように日常的に昼間育児をする人をイクメンと呼べるかは微妙なところでした。だから司法試験の最中に実家で子供を預かってくれた母親からハッキリと「お前は無職だからイクメンではない。」と言われてどこか楽になったことをよく覚えています。その反面、検診で保健所に行くと子供を背負う私にかなり不自然なタイミングで「パパ、とてもカッコいいわよ。」と言ってくる保健士がいました。あれは今思えばイクメンプロジェクトの一環だったんでしょうか?

次男は夕方になるとぐずり始めるため、日が暮れかかると散歩に出かけていました。子育てに参加したことがない世の男性たちに一つレクチャーしておくと「ぐずる」とは、おしめを替えてミルクを飲ませて何度か高い高いとかをしてもふぇふぇいって一向に落ち着こうとしない、そんな赤ちゃんの状態を言います。次男がぐずり始めたのを見計らって司法試験の勉強を中断し、おんぶ紐で背負って片道45分くらいのショッピングモールに出かけるのがその頃の私の日課でした。

近所のショッピングモールには色んなものが売っていましたが、お金がない為何も買うことが出来ません。辛うじて買うことが許されるユニクロのヒートテックが限定商品になっているかどうかを確かめて、カルディで無料のコーヒーを飲んで帰るというのが通常のメニューです。ユニクロのヒートテックは大概週末に限定商品になるため、必然的にカルディでコーヒーを飲めるか飲めないかが重要なポイントとなってきます。飲めないと帰り道でかなりのダウンビートを強いられるので少なくない神経を注いでいたのです。絶対に気付かれていたでしょうが、毎日来ていることを悟られないために持ち手は少ないながらも洋服のコーディネートに気を遣ったり、「お願いします。」の声のトーンや仕草までに工夫を凝らしたりしていました。特に深い意味もないんでしょうがコーヒーを受け取る際に「買い物もしていって下さいね。」と言われる日はとても辛くて、誰かがレジに並んでいる隙にサッと店を後にするのはほかの日と同じなんですが、「買い物をするつもりはあったんだけど、今日はたまたま買わなかっただけなんだ。」と自分に言い聞かせて気をしっかり保つ作業が一つ必要になりました。

こうやって言葉にすると改めて自分はイクメンではなかったと感じます。イクメンの生みの親である労働大臣もカルディで毎日コーヒーを飲むことに神経を注ぐパパは想定していなかったでしょう(笑)

次回以降イクメンと家庭裁判所の実情に迫っていきたいと思います。


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